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防災夫婦( BousaiLove)です。
正常性バイアス (Normalcy bias)
人は予期しない事態に対峙したとき、
「これは正常の範囲内だ」と思い込んで、平静を保とうとする心理的な働きがあります。
これを「正常性バイアス」と言います。
日常生活で問題が発生するたびに脳が反応していたら、精神的に疲弊してしまうの防ぐため、人間に備わっている心の働き(メカニズム)です。
「正常性バイアス」は、人間の防衛本能なんですね。
正常性バイアスの危険性
人間の防衛本能とも言える「正常性バイアス」ですが、災害時には危険を過小評価してしまいます。
一刻も早く避難するべき非常事態に直面していながら、「正常性バイアス」によってその認識が妨げられ、逃げ遅れるという自体が深刻化しているのです。
災害時の被害拡大の原因は「パニックになること」と思われがちですが、
実は、正常化バイアスによる逃げ遅れが多くを占めています。
過去の事例からも、災害時に自分の身を守るために迅速に行動できる人は、“驚くほど少ない”ことが明らかになっています。
多数派(集団)同調バイアス
もう1つの逃げ遅れの原因として「多数派(集団)同調バイアス」と呼ばれる心理現象があります。大勢の中にいると取りあえず周りに合わせようとする心理状態のことです。
ある心理学の実験では、学生寮で事前に訓練とは知らせず、非常ベルを鳴らしました。
その結果、1人部屋の人は直ぐに外に出て避難するのに比べ、部屋の人数が増えれば増えるほど行動が鈍くになり避難が遅れるといった実験結果があります。
これは、大勢の人がいると多数派同調バイアスと同時に正常性バイアスも強化されてしまうことを意味しています。
正常性バイアスの事例
それでは、「正常性バイアス」や「多数派(集団)同調バイアス」による過去の事例を見てみましょう。
平成30年7月豪雨(西日本豪雨災害)
2018年7月6日から8日にかけて、西日本を中心に襲った豪雨に対して、気象庁は「大雨特別警報」を発表した後に記者会見を開き、九死に一生レベルの危機が差し迫っていることを呼び掛けました。
しかし、西日本豪雨災害で避難を決意したきっかけについて、NHKが被災地で行なったアンケートでは、「周辺環境の悪化」が第1位(33.5%)に比べ、「テレビ・ラジオ」がきっかけで避難を決意した人は4.5% という結果になりました。
どれだけ警報を発令していても、実際に身に危険が差し迫るまでは避難を決断しなかったという実態が明らかになりました。
東日本大震災
東日本大震災では津波避難の警報が出ても避難しない人が多く、実際に津波が目視にて確認できるようになってから避難する人がおり、結果として津波からの避難で逃げ遅れてしまいました。
地震発生直後のビッグデータによる人々の動線解析でも、ある地域では地震直後にはほとんど動きがなく、多くの人々が実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、結果、避難に遅れが生じたことが解明された。
大邱地下鉄放火事件
韓国で発生した大邱地下鉄放火事件は「正常性バイアス」「同調バイアス」を紹介する事例として多くのメディアで取り上げられています。
地下鉄での火災にも関わらず、乗客が煙が充満する車内の中で口や鼻を押さえながらも、座席に座ったまま逃げずに留まり、多くの犠牲者が出ました。
加速する正常性バイアス
災害慣れによるバイアスの加速
近年、全国各地で地震や水害が多発しており、警報が発令される頻度も多くなりました。また、スマホの防災アプリの普及率も高く、災害アラートも日常化しつつあります。
これによって、次のような現象が起こっています。
- 『警報が出るのはよくあること』
- 『今までも大丈夫だったし』
- 『どうせ誤報だろう』
災害慣れした感覚が余計なバイアスを生む原因となっています。
加速するインフラ整備とバイアス
東日本大震災では「チリ地震津波のあとにできた堤防があるから大丈夫」と思い込んでいた高齢者が多数犠牲になりました。また、西日本豪雨災害では「ダムがあるから安全と油断して逃げ遅れた」という声が多く聞かれました。
現在、東日本大震災並みの津波がきても大丈夫なように、十数メートルの巨大堤防の建築が進んでおり、西日本豪雨災害の被災地では、今後一層大規模なダムや堤防が建設されることが予想できます。
しかし、それらのインフラは強固になればなるほど、住民の正常性バイアスを高めてしまう可能性が高いです。
世界が注目する「防災大国」キューバ
キューバの防災インフラ
世界で最も多くのハリケーンが襲来する地域の一つ「キューバ」は、経済的な理由から世界的にみても防災インフラ整備は遅れています。首都ハバナでも防波堤などの防災基盤を築くまでに至らず、ハリケーンの高潮では水没する状況。
しかし災害時におけるキューバの死傷者は驚くほど少ないことで有名です。
国をあげての防災体制
キューバでは、正確な天候予測ができるよう国策として気象学の向上が重要視され、災害発生が予想される地域には国営のバスが避難援助にやってきます。
災害が発生してからではなく、発生前に予防措置として住民を避難させる体制が整っており、人だけでなく家畜やペットも一緒に避難させ、避難所には獣医がいる徹底ぶり。
また、避難所の環境にも配慮があり、子どもの教育や映画などの文化的催しを行うことにも力を入れている。
さらに、憲法にも「市民防衛」が制定されており、学校教育でも「防衛」が授業科目にあり、大学では全学部で防災システムや災害防衛システムが必修科目となっている。
バイアス知らずの防災モデル国
インフラが未整備で災害に弱いように思えるキューバですが、インフラに頼る意識がない分、「正常性バイアス」が避難の妨げになることはありません。
また、国をあげての徹底した防災体制により、驚異的な死傷者の少なさを確立しています。今やキューバは、国連や赤十字からも「防災モデル国」として注目を集める存在となっているのです。
訓練による備え
日本は防災インフラが整っているため、バイアスはかかるのは避けられません。
さらに防災インフラはますます精度を高め、それに比例して正常性バイアスも高まる傾向にあります。
では、私たちはどうしたら良いのでしょうか?
それは「備えること」です。
「正常性バイアス」がかかるのは「予期しない事態に対峙したとき」です。
災害を想定した訓練を重ねることで、
いざというときも自然と適切な判断力を失わず、行動をとることができるようになります。
その前提として、確かな「防災知識」を身につけておくことが何より大切です。
避難所の充実による被害の回避
避難所のイメージ
あなたは「避難所」と聞いてどんなイメージを持っていますか?
- 体育館のような場所
- 硬い床の上に段ボールを敷いて寝る
- エアコンなし
- 仕切りがなく、プライベートなし
- 食べものやドリンクの配給があるのか不明
- お風呂なし
- 自宅より不衛生っぽい
避難所って、自宅より安全かもしれませんが 「快適」とは言えません。
みんな、そんな場所にできることなら行きたくないんですよね…
「正常性バイアス」だけでなく、
このような心理も迅速な避難の妨げ(逃げ遅れ)になっていると考えられています。
避難したくなる避難所を目指して
避難所の充実度を上げて「避難したくなる避難所づくり」にも、国をあげて取り組もうという動きがあり、私はそれに大賛成です。
正常性バイアスは、冒頭でもお伝えした通り「人間に備わっている防衛本能」のようなものです。
そこを鍛えるよりも、避難所に行くことがグランピングを楽しむ感覚で行けたら逃げ遅れの被害は確実に減少します。
あ!地震だ!手ぶらですぐ避難所へ行こう!(家より快適だし、正確な最新情報も手に入るし♪最高)
っていうのが、避難所の理想イメージですね。
とはいえ、正常性バイアスの対策として防災対策や訓練を重ね、いつでも当たり前のように行動できる習慣をつけることも大切です。
さいごに
いかがでしたか?
本記事では、人間の防衛本能である「正常性バイアス」が災害時には被害が拡大する原因になるという恐ろしいお話をご紹介しました。
「正常性バイアス」は人間に備わる心理的な本能のため、この記事の内容を知らなければ自分で気がつくことはまずありえません。
しかし、この危険性を知っていれば『こういう状況って、人はバイアスがかかるんだったよな。本当に大丈夫かな?』という思考ができます。
この記事で「正常性バイアス」や「多数派(集団)同調バイアス」の存在を知っていただけたことはとても重要なことです。
まずは自分を疑い、発災時の適切な行動の第一歩として、率先避難者になることをおすすめします。